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むかしばなし

Photo 色鉛筆画、

むかしばなし (2012.07.25日の雪女からの続きです)

梅雨があけたとたんに、毎日が猛暑です。

こんな時には、涼しげなお話でも。

3姉妹も大きくなり、手がかからなくなりました。

お雪は、遠くの雪をかぶったアルプスの山々を見つめ、

初めて出会ったあの山、故郷を見つめるような眼差しで、

見つめてはボーとしています。

しばらく山には行ってないね!

ん・・・?

仕事に追われて登山を忘れかけていたけど、

まだ登れるかな。

大丈夫、私がついていれば、あなたを守ってあげる。

必ず登れる、私が保証するョ!

そー言われてもなー、

自分のお腹に手を置き、必死にへこませようとした。

色白で長い黒髪のお雪を、山頂まで

エスコートできる自信は、今の自分には絶対無い。

でもあの白い雪をかぶった頂に、お雪は行きたいんだろうな。

よし、青春を駆け抜けたあの山に行ってみよう。

もう一度すばらしい、あの山を見てみようと思った。

車に変わって、スポーツサイクルに乗り換え、

エレベーターもやめ階段で上り下りしながら、

休日は近所の山に、登山訓練に出かけ続けた。

体重も減り、お腹もすっきり、顔は真っ黒に日焼けした。

どう、お花を見ながら長い雪渓を登ってみない?

お雪は目をキラキラさせて、ホント!

大雪渓からの白馬岳、忘れかけていた山への思いが

もう気持ちは、はるかかなたの雲の上にあった。

猿倉の駐車場に車を停めて、

白馬尻小屋まで、花を眺めながら山道を進む、

やがて大雪渓が現れると、乙女のように目を輝かせ、

両手を広げ、胸いっぱいに空気を吸い込みながら、

思いは一気に山に溶け込んでいった。

後姿は学生のよう、このスレンダーな容姿からは、

とても3姉妹の母親には・・・。

この元気なファイトはどこから出てくるのだろう?

後ろからついて行く色黒の山男は、父親のよう。

大雪渓は意外と固く、ゴツゴツと波打っていて歩きにくい。

お雪は苦も無く進んでいくけれど、傾斜が有り、なかなか進まない。

雪渓の上を霧のような冷気がサーと流れてきて、冷蔵庫の中を

歩いているようです。

雪渓の両岸の草むらには、いろんな花が咲き乱れ、

お花畑を、ずーと眺めていたい気分です。

大雪渓は平らではなく、途中盛り上がって上部が見えない、

上に進むほどに、冷蔵庫大の岩が転がっている。

たまにシュルシュルっと岩が転がってくる。

下が雪なので大きな音がしなく、バウンドすると早い。

大きな葉の中央に白い花のキヌガサソウ、

薄紫色の花びらシラネアオイ、

白い花のハクサンイチゲ、

華やかな花に迎えられ、お雪は登山を忘れてしまう。

おーい、早めに通過しよう。

雪渓を抜け岩道に入る頃、アイゼンを外して軽食をとる。

このころから、青空が見えるのにみぞれ混じりの雲が現れ

横から下から煽られます。

下界はあんなに暑かったのに、山はいきなり冬です。

身体が一気に冷えてくる、もう少し登れば山小屋なのに、

肩で息をしながら、なかなか現れない山小屋をめざした。

前が見えないほど荒れてきた、身体が重く足も進まない。

少し休まないか、先が見えないし身体が冷え切って動かないよ。

非常用に持っているツェルトをハイマツの間に張り、

悪天候をやり過ごすことにした。

なんとか2人が入れたツェルト、下着を替えて保温に努める。

冷えた身体をお雪に寄り添っていると、眠気が襲い遠くなる。

どこからか、大丈夫よ少しお休みなさい、つぶやくような?

どこかで聞いたことのあるような、ささやきがだんだん遠くなる。

身体が重い、動けない、あの雪崩の感覚がよみがえる。

どのくらい眠っていたのだろう。

目だけキョロキョロと動かす。

ハー・・・大きな溜息?

狭いツェルトの中で、覆いかぶさって眠るお雪がいた。

溜息は、がっかりしたものか、雪女じゃない安堵のものか?

あなたを守ってあげるって、言ってたよな・・・?

オイ!!、お前だよ、デブ!

・・・・・何よ。

お昼寝中に起こされて、不機嫌な返事。

けっこうな重さに、思わず言ってしまった。

外を見ると、雲の隙間に青空が見えたりしている。

見えるようになってきたよ、行こうか。

もう少しだものね、出発進行。

何度かハイマツを過ぎると、遠くに山小屋が見えてきた。

急激な低温度にペースが大きく落ち込み、

村営頂上宿舎の山小屋に着いたときは、さらに上に有る

山小屋までは、行こうとは思わなかった。

荷物を降ろしてカメラを手に高山植物を観察した。

紺色花のグルップソウが沢山見られ、春先はお花畑です。

山小屋はまだ、登山者が少なく個室でゆっくりと休めました。

明日は、白馬岳山頂に行こう。

山の夜は早くて、早々に布団にもぐり込む、

夜通し風が強く、雨のようなみぞれのような悪天候でした。

早朝ガタガタと動く登山者達の物音に目が覚めた。

隣を見ると、お雪がいない、布団も冷たいしどこ行ったんだろう。

コーヒーを作っていると、しっとりと黒髪を濡らしたお雪が戻る。

少し目が充血しているような、寝なかったのだろうか?

聞くことも無く、稜線はお花畑だし景色も良いし、

無理な行動は控えた方が良いのかな。

どう・・・もう一泊して楽しまない?

・・・うん。

外を見つめながらうなずいた。

それならばと、ゆっくり、お雪のお花見につきあう。

白馬岳の頂上は風が強く、反対側は谷に切れ込んでいた。

遠く雲海が広がり、この感覚を忘れかけていた。

天と地の間に広がる空間を、しっかり目に焼き付けた。

稜線はどこまでも続き、山を知るにはまだまだ先がある。

どことなく元気がないお雪、夜通しどこに行っていたのだろう。

誰に会っていたのだろう。

思いは果たせたのだろうか、何も語ろうとしない。

この夜は山小屋で熟睡できたようで、

次の朝は、何事もなくケロッとしたお雪がそこにいた。

雪が好きなお雪に合わせ、来た道を戻るコースにした。

天気も良く、沢山の花に囲まれて、長い髪の乙女が

草原を、雪の上を、下っていった。

やっぱり、記憶が薄れる中で聞こえた声は

お雪だったのだろうか、

覆いかぶさっていたのは、冷えた身体を温めていたのだろうか。

もうすこし目を閉じていればよかった。

どうしても思い出せない、柔らかいぬくもりや、

むせるような黒髪のにおいは、お雪だったのかも知れない。

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